歯科衛生士で独立できるの? 後編

独立起業するのに大事な4つのポイント
川井 次になんですが、独立起業・フリーランスとなると「決まった日にお給料をもらう」から「自分で稼ぎにいかなくてはならない」に変わっていくことになりますが、その点においては不安はなかったですか?視聴者の方も、そういったところが一番気になるところだと思うんですね。独立は良い面もありますが、反面そういった不安でなかなか一歩をふみだせないのではないかと。
ーー不安はもちろん!ありましたよ。学校に勤務していましたから、健康保険は共済組合でしたし、厚生年金もありましたし、有給休暇なんかもあるわけです。雇用保険、ボーナス…全部あったものがないわけですから。あるのは、自由に働く環境を選択できる、働く日程や頻度を決められる。あと、給料の額です。ドクターに「いくらくらい必要なの?どれくらい渡せばよいかわからないから、決めてくれる?」と言われました(笑)。まずは今までの年収を月収換算、日給に換算して時給を割り出しました。健康保険、ボーナスなどもないわけですから、時給2000~3000円もらわないと成り立たないのです。
働いてわかったのですが、夏休み、ゴールデンウィーク、年末年始など歯科自体がお休みになると、減給になってしまうんです。どうしようかと思ってアルバイトしなくちゃいけないかな?と考えたのですが、年間トータルで考えるとやっていけるだけのものをもらえていたので大丈夫でしたね。その連休のお金の計算を頭に入れておくというのは大切です。
それから確定申告ですね。青色申告を教えてもらってからは、「経費での落とし方」がわかりました。交通費も経費、ドクターに手土産持っていく場合も経費でおとせます。ただ、フリーランスになった次の年明けからは会計作業も自分でやっていかなくてはならないです。やらなきゃいけないことは増えますが、お金の流れ、お金の仕分けなど勉強になりましたね。不安もありますが、その分楽しさもありますよ。
自分の仕事、治療に 患者さんが選んでついてきてくれるのでやりがいはあります。歯石をとったりクリーニングを頑張ってスキルを上げていけば、「沢口さんにやってほしい」「次もお願いします」って言ってもらえるのです。私が歯科を転院すことになったとき「沢口さんがいく歯科に私も転院する」とついてきてくれる患者さんがいたのは、本当に嬉しかったですね。ドクターには言いずらいですが(笑)。美容師さんにそういうこと結構ありますよね。歯科衛生士にもそういうことってあるんだと思いました。20年以上お付き合いしている患者さんがいるんですが、私は20年間同じ歯科に勤めてないので、ずっとついてきてくださっているわけです。
川井 独立、フリーランスになったあと、何が変わったと思われますか?
ーーずっと施術させていただくので飽きられるのは良くないですよね。ですから、常に新しい情報を仕入れていくということには気を付けました。学会、勉強会に参加したり、歯科や健康に関する本を読んだりとか、テレビでおもしろい話だなと思ったらネットで検索してその人の本を手に入れて読んでみたりとか。新しい情報を入れて患者さんにフィードバックしていると患者さんも新鮮さを感じ取ってくださるんです。ここ数年は海外で勉強して帰ってきたら、「沢口さんは何かと勉強して新しいこと仕入れてくるわね」「次来るのが楽しみよ」と言われるのは単純に嬉しいです。
川井 最近はタイで講演されたと聞きました。海外で講演されることもあるんですね。
ーーはい、あるメーカーさんからですが、通産省のお仕事としてタイのデンタルナースさん達に話をしてくれとオファーがありました。
川井 タイの衛生士さんたちがすごく興奮していたと伺ったのですが
ーーそうなんですよ。他に医科歯科大のドクターなどの講演もあったのです。私の回は時間が押していたこともあって、少し端折ってしまおうと短めにきりあげました。タイの人はあまり質問しない傾向があるので大丈夫ですと事前に聞いていたのですが、私の時にすごく沢山の質問が出たんです!こういう患者さんの時はどうするのですか?など細かい質問が。あとで「こんなに質問が出て盛り上がった講演はなかった」という後評をいただきました。嬉しかったです。
川合 タイには歯科衛生士という資格はあるんですか
ーーまだないので、デンタルナースといって、日本でいう助手さんと同じ感じみたいです。これから衛生士という資格を作っていこうという活動はしているみたいですね。アジアで歯科衛生という資格があるのは日本以外ですと韓国だけのようです。東南アジア方面ではまだまだ遅れているので、医科歯科のドクターが情報を提供しているらしいですね。
学校を作って資格を作るというのは並大抵のことではないですが、タイではデンタルナースさんを教育して今後そういう資格を作っていこうという活動をしているみたいですね。
川井 最後になりますが、これから独立しようとしている方に向けてのアドバイスをお願いします。
ーー①資格とかプロフェッショナルな分野でフリーになるなら抜きん出て欲しいです。
②同時に顧客に対してどういう情報を提供できるかというところが鍵になってくると思います。ですから勉強することは大切になってきますね。年齢とか関係なく貪欲にです。私もつい最近学会の認定衛生士の資格を取りました。2か月くらい寝る暇を惜しんで勉強しました。そういう努力はやってほしいです。そのかわり、楽しいです。
③やるからには長くやってほしいです。年齢それこそ関係ないですよ。望まれているうちは頑張る。アメリカでは歩けないくらいのおばあちゃまが現役衛生士として活躍されてました。80歳はすぎているとのことでした。73歳まではローンが終わるまで頑張るとドクターにいったら、そのドクターは86歳まで頑張るっておっしゃってました。私もそれを聞いて負けられないなと思いました。
④あと大切なのは仕事を趣味のように楽しんじゃうこと。これは大切ですね。
①~④が私の考える独立起業に必要な大事なポイントです。
川井 本日は長い時間ありがとうございました。